発達障害とは?

チルプレ

チルプレ記事 2023.5.1

みなさんの身近な方に、発達障害のお子さまはいらっしゃいますか?
多くの方は何かのきっかけで発達障害について調べ始めます。
たとえば、ご家族やご自分が発達障害かもしれないと感じられたときです。

ですが、発達障害とはなにかについてはまだまだ誤解も多くあります。

この記事では、発達障害とはなにか、どのような特徴があるのか、どのくらいいらっしゃるのか、などをお話しします。

目次
発達障害とは?
発達障害の特徴は?
発達障害のお子さまは、どれくらいいるの?
発達障害の原因はなぜ誤解される?
発達障害への支援
発達障害は「障害」なの?

発達障害とは?

発達障害にはいろいろな説明の仕方があります。たとえば厚生労働省は

– 「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、
幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態」

と説明しています。
※1 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
大切なことは、「脳の働き方」が理由であるというところです。
いまでも、「発達障害は親のしつけのせい」などという、言うなれば時代遅れの意見を見かけますが、これは科学的にはっきりと否定されています。
生まれた後の環境は、発達障害の原因ではないということです。

発達障害の特徴は?


発達障害の種類には、次のようなものがあります。
自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(LD)、局所性学習症(SLD)、チック症、吃音などです。

いろいろな名前がついていますが、先ほどの厚生労働省のウェブサイトによれば、どれも脳のはたらきに原因があるそうです。

自閉症スペクトラム症(ASD)


発達障害のうち、もっともよく知られているものです。
こちらには、自閉症やアスペルガー症候群などが含まれます。人づきあいが苦手だったり、決まった順番ではないと癇癪(かんしゃく)を起こしたり、特定のにおいに敏感だったり、といった特徴を持っています。

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症(ADHD)は、
ほかのお友達と比べて落ち着きがないとか、じっと待つことができないとか、忘れ物が多いといった傾向があります。
長い間ひとつのことに集中することが苦手なので、大人が思いもかけない動きをして、まわりの人をびっくりさせることもあります。
お片付けが苦手、という面もあります。

学習障害(LD)、限局性学習症(SLD)


幼稚園や小学校でお友達と一緒に勉強するようになると、学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)という発達障害の影響も大きくなります。
知的障害と混同されやすいのですが、これとは全然ちがうものです。
むしろ、全体としては理解しているのに、読むことだけが苦手、書くことだけが苦手、計算することだけが苦手、といったものです。
発達障害だと診断されずに、「勉強ができない」とひとくくりにされてしまい、お子さま本人もとても苦しい思いをします。

チック症、吃音

チック症と吃音も、たくさんの方が悩んでいます。
チック症は、自分の気持ちとは関係なく、手やまぶたが速く動いてしまったり、口から音が出てしまったりする症状です。
吃音は、すらすらと話すことが苦手で、同じフレーズを繰り返したり、話し始めるのに時間がかかったりする症状です。

発達障害の子は、どれくらいいるの?

発達障害の専門家である市川宏伸先生(埼玉県発達障害総合支援センター長)によれば(※2)、日本全体の発達障害のお子さまの正確な人数は調査されていないそうです。個人情報収集の難しさなどがその理由とのことです。

代わりに、文部科学省が行っている調査(※3)がよく使われています。
調査は10年ごとに行われていて、いちばん新しいものが2022年に発表されました。
誰でも文部科学省のサイトで見ることができます。

この調査によると、小中学校のお子さまで、「学習」「行動」「対人」のうち、どれかひとつでも困った点があると先生方に判断された人数は、8.8%でした。これは、100人あたり約9人位です。
いまの小中学校は1クラスが平均して35人くらいなので、35人に8.8%をかけると、だいたいクラスのうち3人に、発達障害の可能性があるということになります。
ですが、この調査は医師が判断した調査ではないので、8.8%の全員が発達障害だというわけではない点に注意が必要です。

幼稚園や保育園における発達障害の割合や人数については、やはり全国的に行われているものはありません。
ですが、磐田市の調査で「幼稚園の年長児で発達障害が疑われる子の割合は全体の13%」だったという新聞記事(※4)がありました。
とはいえ、これも10年近く前の調査ですし、この数値をそのまま日本全体の発達障害の数だと考えるのは難しそうです。
※2 埼玉県発達障害総合支援センター「発達障害とは何だろう」
※3 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」
※4 朝日新聞「発達障害、支援強化へ 磐田市、研修や通所事業充実「組織が一体でサポート」/静岡県」2013年1月25日朝刊・遠州地方面

発達障害の原因はなぜ誤解されているのか

発達障害は、まだまだ誤解されることの多い障害です。
「脳のはたらきに原因がある」、つまり「先天性」であることは、厚生労働省のサイトでも、「日本発達障害ネットワーク」のサイトでも、はっきりと書いてあります。
ですから、決して、発達障害は親の育て方が悪いとか、本人の努力が足りないとかいうものではありません。

ですが、たとえば自閉症などは、親の愛情不足やテレビなどが原因だとする考える方(心因説というそうです)を持つ方が、古い世代を中心にまだいらっしゃるのも事実です。

東京大学大学院の篠宮紗和子さんの論文(※5)によると、医学の世界では、1970年代には、自閉症の原因が脳機能の障害であるとわかっていたそうです。
ですが、自閉症はあえて「情緒障害」として教育制度上扱われてきました。これは、当時の教育制度上、自閉症の疑いのある子供たちの教育機会を増やすための苦肉の策だったようです。
しかし、「情緒障害」という言葉の持つイメージは、脳機能の障害という発達障害の正しい定義とはかけ離れています。
この結果、世の中で自閉症の原因が正しく理解されるようになったのは2000年代と、比較的最近になってからだそうです。
※5 篠宮紗和子「医学理論はいかにして教育制度に取り入れられるか——自閉症教育制度における脳機能障害説の位置づけ——」

発達障害と愛着障害が混同されやすいことも、発達障害の原因が理解されない一因になっているかもしれません。
愛着障害は発達障害と違って、保護者との間の愛情の問題が原因です。ですが、どちらの障害も人づきあいが苦手である、感情の起伏が大きいといった似た症状がでるので、愛着障害の話なのに発達障害のことだと勘違いしている方もおられるようです。

このように、発達障害についての無理解や先入観から、心無い言葉に保護者やお子さまが苦しめられることがあります。ですが、それは本来受けなくてもいい苦しみだと言えます。

お子さまの発達に悩みをもつ保護者への支援

お子さまの発達に悩みを持つ保護者のために、世の中ではいろいろな支援が行われています。
たとえば、主要エリアごとに設けられている児童発達障害支援センターでは、地域で発達障害について悩む家族を包括的にケアしています。
発達に悩みを抱える保護者とお子さまが、心理カウンセラーや保育士の方と相談できるようになっています。

ほかにも、発達障害のお子さまのケアを専門にした施設が、児童発達支援というサポートを行っています。
「チルプレ」でも、主に2歳から12歳までのお子さまに対して、運動・学習を中心とした発達支援を行っています。
子どもの得意・不得意を早期に見極め、日常生活・社会生活に必要なスキルを身に付けるといった効果が期待できます。
※6 「宮城県、仙台市の児童発達支援・放課後等デイサービス」チルプレ

発達障害が「障害」でなくなる日

日本発達障害ネットワークのウェブサイト(※7)に、こんなフレーズがありました。

障害という言葉は、成長の中で「困ること」が生じる場合につけ加える言葉です。従って、その人の置かれた場所で「困ること」が全く生じないとしたら、リスクとしては何らかの障害になりうる問題があったとしても、障害ととらえる必要はありません。
※7 日本発達障害ネットワーク「発達障害の定義」

世の中が発達障害のことを少しずつ理解するようになって、発達障害のお子さまとその保護者が何に困っているのかがわかるようになれば、
発達障害が「困ること」になる場面を減らしていけるかもしれません。